新規事業とは

新規事業とは何でしょう?新規事業という言葉の意味は曖昧です。人によって理解が違います。新規事業とは何かを以下の3つの観点で考えます。

1.これまでとは違うお客さんに、違う製品やサービスを提供する事業
2.これまでの日常業務にはないオペレーションが要求される事業
3.いかなる場合も既存事業の強みを活かして行う事業

なお、新規事業というと、世の中にない製品やサービスを生み出すものと考えている人がいますが、あくまでも自社にとって初めての事業であれば新規事業です。他にはない革新的な製品やサービスである必要はありません。

これまでとは違うお客さんに、違う製品やサービスを提供する事業

私の知る企業に自動車の部品に使うばね製品を作っている会社があります。その会社は大きなばねから非常に小さなばねまで、高い精度でつくることができる技術を持っています。その強みの技術を活用し、自動車部品業界から医療機器部品業界に進出しました。例えば、内視鏡に使われている小さなばね製品の開発・製造です。これは自動車部品市場から医療機器部品市場という違う市場へ進出する新規事業です。自動車部品を買ってくれる企業と、医療機器部品を買ってくれる顧客企業は異なるので、これまでとは異なるお客さんを相手にする事業です。また、自動車で使うばね製品は医療機器で使うばね製品とは仕様が違うので、新商品を開発する必要もあります。したがって、提供する製品も既存事業とは異なってきます。このように、これまでとは違うお客さんに、違う製品を提供する事業は新規事業です。

下記のような図をみたことがありますか? これは企業が成長する4つの方向性を示した図です。既存製品を既存の市場に提供して成長する戦略を市場浸透戦略といいます。既存事業の市場が伸び盛りの時は市場浸透戦略が重要です。一方、新規製品を使って既存のお客さんで成長する戦略を新商品開発戦略、既存の製品を新市場の顧客に販売して成長するものを新市場開拓戦略といいます。新市場に新製品を持って成長しようという戦略は多角化戦略といいます。

ばねの製造企業は、医療機器部品市場へ新市場開拓を行い、医療器具向けの新商品開発を行っているので「多角化戦略」に分類できるかもしれません。

これまでの日常業務にはないオペレーションが要求される事業

上記で示した図において、「新商品開発戦略」や「新市場開拓戦略」にあたる場合でも新規事業と考えるべき場合はないでしょうか? 私は、これまでの日常業務にはないオペレーションが要求される事業の場合は新規事業と考えます。

①「新商品開発戦略」の新規事業

町の電気工事屋さんが、システムキッチンの施工などのリフォーム事業を始めたとします。電気工事というサービスに、新しくリフォーム工事という商品を付け加えたことになります。これは既存の電気工事のノウハウの延長ではないので新しいオペレーションが必要です。勉強したり準備したりすることもいろいろあるでしょう。お客さんは同じ近隣の人々なので、電気工事の顧客と同じ人という場合もあるでしょう。それでも、これまでとは異なるノウハウや仕入れ先を使って新しい価値を提供しなければなりません。これは私は新規事業と考えます。

ちなみに、今までカツカレーと野菜カレーをやっていたカレー屋さんがエビカレーというメニューを追加する場合はどうでしょう。これは新規事業ではなく「既存事業の範囲での新商品」と考えるべきで、新規事業とはいえないのではないでしょうか。全く新しい事業ノウハウが必要というのは言い過ぎと考えるからです。

②「新市場開拓戦略」の新規事業

国内だけで販売していた会社が、成熟した国内市場では成長が望めないと思い、海外に進出するとします。海外進出は今までの仕事のやり方にはないオペレーションが必要になります。だから国内と全く同じ製品やサービスを提供するにしても海外進出事業は新規事業と考えるべきです。

しかし、例えば関東のお客さんを相手にしていた企業が名古屋のお客さんに売りに行く場合新規事業というのは言い過ぎでしょう。営業範囲を広め新たな顧客開拓をするのは確かですが、新規事業というよりは「既存事業の範囲内での新市場開拓」だと考えるほうが納得がいくと思います。新しいオペレーションのノウハウは海外進出ほど必要ではないからです。

上記のように、新商品開発戦略(既存のお客さんに新商品を販売して成長する)、新市場開拓戦略(既存製品を新規市場の投入して成長する)においてもオペレーションに新しいノウハウが必要なら新規事業と位置付けるというのが本サイトでの考え方です。

なお現実には、新規事業は新市場開発の要素と新商品開発の要素を多かれ少なかれ両方含むことが多いです。例えば、海外進出は同じ製品で新市場開拓をするといいましたが、海外市場に国内と全く同じスペックのものは通用しないことが多いので、現実には新商品開発の要素も必要になります。

いかなる場合も既存事業の強みを活かして行う事業

新規事業とは、「これまでとは違うお客さんに、違う製品やサービスを提供する事業」であると書きました。また、必ずしも「違うお客さん、違う製品やサービス」という条件に厳密にこだわらず、「これまでの日常業務にはないオペレーションが要求される事業」の場合は新規事業と考えました。ただ、いずれの場合であっても、既存事業の強みを活かして行うという点は同じです。

例えば、ばねの製造をしている製造業が、今後はイタリア料理のチェーン展開で成長を目指すということはあまりありません。自社の強みの技術を別の分野に展開して新商品を開発するとか、自社の強みの販売ルートに新しい商材を載せて売るとか、新規事業はなんらかの形で既存事業の製品や市場とつながりを持って行うことがほとんどです。

先ほどのばねを作っている会社で言えば、自動車部品業界で培った「大きなばねから非常に小さなばねまで高い精度でつくることができる技術」という強みの技術を活かして、自動車業界だけでなく医療機器業界にも進出しました。

電気屋さんは近隣のなじみのお客さんという強みを活かして、リフォーム事業に参入するのです。国内で成功した強い製品があるから、海外でもその強みを活かすために海外展開するわけです。

このように自社の強みを活かして新規事業を考えることが重要です。これを「強み伝いの成長」といいます。だから、新規事業を企画するためには、自社の強みは何かをとことん考えることが出発点になります。

まとめ

いろいろな考え方があるし厳密に定義するのは難しいですが、このサイトでは、以下の要素を満たせば新規事業とします。

・これまでとは違うお客さんに、違う製品やサービスを提供する事業

・これまでの日常業務にはないオペレーションが要求される事業

また、いずれの場合も既存事業の強みを活かして行う事業であることです。

新規事業は既存事業とは別の成長方向性を目指す試みです。成長の方向性は、新市場開拓と新商品開発の2つがあります。すでに述べたように多くの新規事業は新市場開発の要素と新商品開発の要素を多かれ少なかれ両方含むことが多いです。新規事業は既存事業の日常業務にはないオペレーションが要求されます。また、既存事業の強みを活かして行うことがとても重要になります。したがって、上記3つの条件は新規事業の重要な要素です。